第1回『YESOD』天才エンジニアの飽くなき追求
働くすべての人たちの不必要な「雑務」をなくし、よりクリエイティブな仕事を
中野智裕(DNX Ventures):ユーザベース(以下、UB)時代、『SPEEDA』『NewsPicks』など画期的なプロダクトの基礎を作り、革命を起こしてきた竹内さんが手がける『YESOD』は、どのような世界を目指し開発しているのでしょうか。
竹内秀行(イエソド):働くすべての人たちが、業務における不必要な雑務を廃し、より価値を創出することに専念できる―。そんな世界を目指して、開発に取り組んでいます。コロナ禍によってテレワークやDX等が急速に普及したことで、SaaSを利用する企業が急激に増えました。企業の個別最適なSaaSサービスの導入が進む一方、これらを管理する企業の管理部門、システム部門、監査部門は様々な課題に直面し、企業全体のコンプライアンス違反リスクが高まっています。『YESOD』は、SaaS管理の様々な悩みを解決する画期的な「SaaS for SaaS」プロダクトなのです。
急成長したユーザーベースの経営の一翼を担う
中野:竹内さんが起業家としての道を歩むことになった「きっかけ」を教えていただけますか?
竹内:大学時代、友人から「プログラミングの仕事があるから、やってみないか?」と誘われたことがきっかけです。最初は個人事業主として仕事を受けていましたが、依頼主から法人化を打診されたこともあり、友人3人と1社目となる会社を作りました。……というのがきっかけですが、それとは別に「会社を作ることは、”面白い”のではないか」という僕個人の思いがあったのです。
中野:“面白い”、ですか?
竹内:ええ。僕は僕自身が「面白い」「新しい」と感じる、その直感を大切にしています。例えば、起業当初に作った、iモード用ブラウザアプリ。このアプリは”パケット量を1/3に削減”できる代物で、インターネット黎明期では他に類を見ないプロダクトでした。今まで誰も見たことがないような、そして多くの人の役に立つ“もの”を作りたいと思いますし、興味が惹かれます。そんな僕ですから、法人化を打診された時にも「なぜ個人事業主ではなく、法人化が必要なのだろう」という問題意識から派生して「なぜ株式会社や有限会社(当時)などの区別があるのか」「労務とは何か」など起業に至る過程すべてが面白くなってきてしまったのです。その後は、少数精鋭のチームで2社目を立ち上げ、とあるIT系ベンチャーのIT部門を丸々請け負うような形でB to Cサービスの開発などを請け負っていました。残念なことに、このITベンチャーは潰れてしまいましたが、この経験を機に”プロダクト開発は「面白い」だけではなく 、B to Bを意識する”という経営者の立場としての視線が定着したのは大きかったですね。ちょうどその頃、弟の伸次(株式会社イエソド・取締役)を通じて……。
中野:UBとの出会いにつながったわけですね。
竹内:弟とUBの稲垣さん(現・代表取締役共同CEO/CTO)が、アビームコンサルティング株式会社在籍時の先輩後輩の関係だったことから、僕に声がかかったのです。UBが作ろうとしているプロダクトが社会に影響を与える”面白い”ものだと感じたこと、そして僕ならばそのプロダクトを作ることが可能だ、という確信もあり、2社目の会社経営と業務の傍ら、2008年からUBに業務委託として参画しました。僕は言葉で説明するよりも、まずは実物を作ってしまう、という職人タイプ。『SPEEDA』『NewsPicks』などの開発以降、僕はCTO兼新規事業開拓部隊として、常に新しいものを作り、ある程度の規模になったらその成果物を開発チームにどんどんパスしていく。そしてパスを受けた開発サイドとビジネスサイドが力を合わせてプロダクトに向き合う。この関係性があったからこそ、世の人があっと驚くプロダクトを輩出できたのだと思います。クリエイティビティが生まれる現場、そして得意分野が異なる多様な人材が補完し合うことで、互いの強みをより強め合える働き方を自分の中で涵養できたのは、大きな財産ですね。
多様性ある組織こそが成功する!
中野:イエソドの組織のあり方につながるお話ですね。弟の伸次さんをパートナーに選ばれた理由も”互いの強みを生かす”補完関係を意識されてのことですか?
竹内:ええ。弟は大手企業のシステム導入やセキュリティ強化施策の企画・実行支援などコンサルティング業務に特化していて、僕はプロダクト作りに特化している。クライアントが抱える管理業務のペインを彼が解きほぐし、僕がそのペインポイントに最適なプロダクトを開発する、というまさに互いの強みを補完できる関係だったのです。あと、最大の決め手は、”パーソナリティ的に異なっている”こと。異質補完の関係だからこそ、いい距離感を保てています。
中野:イエソドに在籍しているメンバーが各担当部門で力を発揮できているのも、そういった組織作りを意識していらっしゃるからなのですね。
竹内:組織の強さの源が「多様性にある」ことはすでにUBにて体験済みですからね。エンジニアとしては、世界中の人に影響を与えられるプロダクトを作りたいという思いが強くなりがちですが、どれだけいいプロダクトを作ったとしても、営業してくれる人がいなかったら売り上げにつながりません。エンジニア、ビジネス両サイドがお互いをリスペクトし合い、強め合える環境は大切にしています。実は、サービスの急拡大とともに早急に仲間が欲しいという切実な悩みもあります。
一方、UBの創業初期から上場までの急拡大フェーズを体験したことで、組織の力を最大限にするには「管理業務の効率化が重要である」ことを学びました。ひとくくりに”管理”といっても営業、プロダクト開発、経理、総務、人事、情報システムなど様々な部署が存在しますよね。つまり、組織の”人”を管理するためには、性格の異なる業務がいくつもあるということ。引いては、会社規模が大きくなればなるほど業務効率化は難しい、ということなのです。現場ヒアリングを重ねれば重ねるほど、頻繁な組織変更や入退社など、人と組織情報の整理と運用に関する課題が見つかりましたし、テックカンパニーであるUBでさえ、管理業務の非効率さをこれほど抱えていたのかと、驚きを禁じ得ませんでした。
企業の人・組織・情報にまつわる非効率をテクノロジーでなくす!
中野:確かにどんな会社であっても、同様の課題を抱えていると聞きます。YESODはその課題を解決するためのプロダクトなのですね!
竹内:ええ。僕自身も管理部門システムの最適化に取り組んだからこそ、気付けたプロダクトだと思います。正直、なかなか人目につかないペインですが、企業経営においてとても重要。人と組織に関わる情報のマスタを整えることができれば、会社の意思決定スピードが確実に上がるわけですからね。と同時に「片手間ではこのプロダクトを作り上げられないが、間違いなくビジネスになる」と直感的に分かりました。そこで、様々な規模の他企業の皆さんにリサーチを重ねることにしたのです。すると、規模を問わず、やはり皆さん、切実な課題感をお持ちであることが分かったのです。UBのアメリカ支社メンバーからも、「人と組織のマスタを整えるプロダクトが実現すれば、世界初のビジネスになる。ぜひ作ってほしい!」と言われたことで、イエソド創業に踏み切りました。
中野:エンジニアでありながら、ビジネスサイドの視点を持つ竹内さんだからこそ生み出せたプロダクト、それが『YESOD』なのですね。
竹内:管理部門の抱える深い課題解決に挑む『YESOD』は世界に競合他社が存在しない、全く新しいプロダクト。深く現場の実務内容を理解した上で、顧客にとって最大限の価値を提供し続けるものでなくてはなりません。そのためには、企業が抱える”人・組織の管理”に紐づく様々な業務課題を解きほぐす必要があります。イエソドが提供するサービス領域はとても新しい領域です。おかげさまでエンタープライズでのYESODの導入が始まり、開発は佳境にあります。そのため、迅速に価値提供をするべくプロダクト開発を推し進めていくエンジニアメンバーと、お客様の課題に真摯に向き合えるビジネスサイドのメンバーの拡充が早急に求められています。ビジネスサイドにおいては、これまで弟、伸次が経営にもサービスにも重要な役割を担ってきましたが、事業拡大により彼のキャパシティの限界も近いと思っています。イエソドはいいチームですが、僕自身の力不足もあり、まだまだ未完成なチームです。新しい仲間を迎えることによって、ビジネスサイドもプロダクトチームもお互いを今以上に補完しあって、共にサービスを向上させていきたいと思っています。「クライアントが抱える潜在的な課題を一緒に考え抜き、解決まで伴走したい」という想いを持つコンサルタントやプロジェクトマネージャー、何より「企業の人・組織・情報にまつわる非効率をテクノロジーでなくしたい!」という熱い想いを持つ方、ぜひ、ご一報ください!